社会理論としてのエスノメソドロジー
山崎敬一 著  A5判 定価(本体価格2600円+税5%)

ISBN4-938551-66-7

目次

序論

第1部 エスノメソドロジーと社会理論
第1章 常識的カテゴリーと科学的カテゴリー―シュッツとエスノメソドロジー
第2章 主体主義の彼方に―エスノメソドロジーとは何か
第3章 ガーフィンケルとエスノメソドロジー的関心―リフレクシビティーと社会的組織化の問題
第4章 社会的行為における意味と規則

第2部 成員のカテゴリー化の問題
第5章 人間のカテゴリー化について―「私」の社会的コンテクスト
第6章 場面の組織化とカテゴリーの組織化―差別のエスノメソドロジー
第7章 性別カテゴリーのエスノメソドロジー―虚構としての男と女
第8章 言語と社会関係のダイナミックス

補論1 いかにして理解できるのか―「意味と社会システム」再考
補論2 「知識と理解」

「序論」より

 この論考は、社会理論としてのエスノメソドロジーについて考察を行ったものである。
 『社会理論としてのエスノメソドロジー』という形でこの論考をまとめたのには、三つの理由がある。その三つの理由が、またこの社会理論としてのエスノメソドロジーという論考の意義にもなると思われるので、それについてまず述べておきたい。
 エスノメソドロジーは、ハロルド・ガーフィンケルがethnomethodologyということばを「人々の(ethno)方法論(methodology)」と「人々の方法論の研究」という研究領域と研究対象を共に示すことばとして作って以来、さまざまな領域の研究に影響を与えてきた。
 エスノメソドロジーにおいて、現在もっとも研究が盛んな分野は、ハーヴィー・サックスによって始められた会話分析の領域であろう。会話分析は、社会学だけでなく言語学にも大きな影響を与え、相互行為としてのことばや、相互行為と文法の関係を研究する方法として、社会学だけでなく言語学においても、もっとも標準的な方法となっている。
 またコンピュータサイエンスの分野、特にコンピュータ支援の協同作業研究(CSCW)や、コンピュータ・ヒューマン・インタラクション(CHI)の分野でも、エスノメソドロジーは重要な研究手法となっている。コンピュータ支援の協同作業のもっとも重要な国際会議である、CSCWやECSCWという国際会議でも、エスノメソドロジーの手法を使った研究は数多く発表されている。また私自身も、現在、情報工学者との共同研究として、身体性を中心にしたCSCW研究や、コミュニケーションメディアとしてのモバイルロボットの開発研究を行っている。