『人工知能の社会学ーAIの時代における人間らしさを考える』
  評者 : 堀内進之介先生 (首都大学東京客員研究員)
『社会学評論』Vol.71 , No.1 , 2020

1950年に発表された論文で、アラン・チューリングは、人間と同じように機械が思考しうるかの検討を提起した。
.....本書は、そうした中にあって、チューリングが提起した上記の問いを念頭に、しかし、チューリングが迂回した問いに「言語ゲーム」と「志向性」という観点から見通しを与え、同時に「人間のいとなみ」とはどのようなものか、それらを明示しようという意欲作であると思われた。
.....本書にいう「社会性」は作動(出力)側に必ずしも必要とはされないのではないか。可謬性を含む、人間より優れた作動(出力)をする計算技術を用いるリスクとその保障を、使用者側が、あるいは社会全体が負う「社会的な解決」の仕方もありえよう。事実、そうした保障の制度的な仕組みは、医療分野にはすでにある。しかし、このように指摘できるのも、本書が汎用AIの短所と、「人間のいとなみ」の長所をクリアに示してくれているからでもある。特化AIと「人間のいとなみ」との適切な関係について、社会学が何か貢献できるときにも、本書が手がかりになることは確かだろう。